皇室のローブ・デコルテを目にした際、遠目には白一色に見えながら、光の当たる角度によって浮き上がる陰影の深さに息を呑んだ経験はないでしょうか。あの布地の奥深さは、名門織元による極限の絹織物技術によって生み出されています。
歴代の女性皇族が着用するドレス地の多くは、京都・西陣の老舗である龍村美術織物をはじめとする国内屈指の機屋が製織を担ってきました。用いられるのは、純国産の極上繭から紡がれた最高級の絹糸です。これをジャカード織機で極細の経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を高密度に織り上げ、菊、唐草、桐、菊花唐草文様などの格式高い文様を布地そのものに立体的に浮かび上がらせます。
ドレス1着に必要な生地の長さはおよそ10〜15メートルとされますが、皇室の正装用反物は瑕疵(かし)一つない完璧な仕上がりが求められるため、熟練工が何ヶ月もつきっきりで織り進めます。裁断や仮縫い、縫製を担当する老舗オートクチュールサロンの職人たちも「針を通す瞬間に独特の重みと手応えがある」と語るほど、生地の密度と張りが市販の絹織物とは一線を画しています。
気になるローブデコルテの仕立て費用については、皇族方の私費である「内廷費」または公費である「宮廷費」から適切に支出されています。公式発表資料や近年の報道取材データによると、ドレス生地代と仕立て代を合わせた実質的なドレス本体の製作費は約300万〜600万円前後と推計されます。宝飾品一式(ティアラ、ネックレス、ブレスレット、勲章用ブローチ)をゼロからフルオーダーする場合は数千万円規模に達しますが、ドレス単体については豪華絢爛な贅沢を排し、日本の伝統工芸を正当に保護・継承するための必要経費として適正に計上されています。