パティシエ エスコヤマの代名詞とも言える小山ロール。週末ともなれば、この1本のロールケーキを求めて全国から車やバスが押し寄せます。なぜこれほどまでに人を惹きつけるのか、その核心はシェフ・小山進氏の研ぎ澄まされた職人哲学と計算し尽くされたテクスチャーの設計にあります。
大阪あべの辻調理師専門学校を卒業後、神戸の「スイス菓子ハイジ」でカフェのフロアスタッフから実績を積み重ね、シェフ・パティシエ、商品開発部長へと抜擢された小山氏。人気テレビ番組のスイーツ対決企画でチャンピオンに輝くなど、卓越した味覚と発想力は創業前から業界内外で知られていました。その小山氏が2003年の独立開業時に「誰もが食べたことのあるお菓子で、誰も食べたことのない感動を創る」という決意のもと生み出したのが小山ロールです。
最大の特徴は、きめ細かくしっとりとしたスフレのようなスフレ生地の食感です。播州地卵と蜂蜜を用いた生地は、口に含んだ瞬間に溶けるような柔らかさを誇り、極限まで甘さを控えたフレッシュな生クリーム、コク深いカスタードクリーム、そしてアクセントとして忍ばせた甘露煮の栗が見事なハーモニーを奏でます。奇をてらわない構成でありながら、ひとくちで素材の鮮烈な風味が立ち上がる設計こそが、リピーターを生み出し続ける理由です。
さらに見逃せないのが、1,500坪の敷地そのものが持つ「物語性」です。お菓子の甘い香りが漂い、四季折々の草花が彩る庭園には、パン、チョコレート、コンフィチュール、マカロンの専門店が点在。訪れる行為そのものがアミューズメント体験となる仕掛けが施されており、小山ロールはその体験を結実させる象徴的なトロフィーとして機能しています。