身長を物理的に伸ばす手術の土台となっているのは、整形外科領域における「仮骨延長法」という生体反応の応用です。骨を切断した際、その切断面の間に自然治癒プロセスとして軟骨性の組織(仮骨)が作られます。この仮骨が完全に硬化して成熟した骨になる前に、ミリ単位の微細なペース(通常は1日あたり約0.75mm〜1mm)で牽引して引き離し続けることで、骨の全長を伸長させます。
歴史的には、1950年代に旧ソ連の医師ガブリル・イリザロフが開発した「イリザロフ法」が基礎となっています。この手法は脚の外側に大型のリング状金属フレームを設置し、皮膚や筋肉を貫通させて骨に差し込んだ金属ワイヤーで骨片を外側から固定・牽引する創外固定法です。極めて強固な固定力が得られる反面、皮膚を貫いたピンの刺入部から細菌が侵入する「ピン刺入部感染」のリスクが極めて高く、数か月間にわたり巨大な装具を装着したまま生活を強いられるため、患者の肉体的・精神的負担は甚大でした。
これに対し、近年の審美目的の現場で主流となっているのが、磁気駆動型髄内釘を用いた「プレサイス法(PRECICE法)」をはじめとする完全体内埋め込み型の術式です。骨の内部(骨髄腔)に特殊なチタン製ロッドを挿入し、外部から専用の磁気コントローラーを当てることで内部のギアを回転させ、ミリ単位でロッドを伸長させます。皮膚の外側に装具が出ないため感染リスクが大幅に低減し、傷跡も最小限で済むという利点があります。ただし、ロッド自体が全体重を支えるには強度が不足するため、延長期間中は車椅子生活が基本となり、完全免荷(脚に体重をかけないこと)を長期間維持しなければなりません。
さらに現場では、外固定と髄内釘を組み合わせることで外固定の装着期間を短縮するLON法(Lengthening Over Nails)などの中間的な手法も存在します。どの術式であっても「健康な骨を人為的に切断し、神経や筋肉を無理やり引き延ばす」という侵襲性の高さに変わりはありません。