結論から述べると、「愛染かつら」という特定の植物分類群は存在しません。一般に「愛染かつらの花」と呼ばれているものは、カツラ科落葉高木である通常のカツラ(学名:Cercidiphyllum japonicum)が春先に咲かせる花のことです。
映画や歌謡曲のロマンチックなイメージから、桜やバラのような華やかで大輪の花を連想する人が多いものの、実際のカツラの花は極めて独特かつ控えめな姿をしています。カツラは雌雄異株(しゆういしゅ)であり、葉が芽吹く前の3月下旬から4月中旬にかけて開花時期を迎えます。最大の特徴は、花弁(花びら)も萼(がく)も一切持たないという点です。
春まだ浅い時期、雄株には鮮やかな暗紅色の葯(やく)を持った多数の雄しべが房状に垂れ下がり、雌株には糸のように細い赤紫色の雌しべが数本まとまって顔を覗かせます。遠目には木全体がうっすらと赤みを帯びて煙っているように見え、木肌の荒々しさと繊細な紅のコントラストが、知る人ぞ知る早春の風物詩となっています。
また、カツラ科落葉高木見頃という観点では、春の開花期だけでなく、ハート型の葉が鮮やかな黄色に染まる秋の紅葉期(10月中旬〜11月上旬)も特筆に値します。秋に落葉したカツラの葉からは、マルトールという糖由来の芳香成分が漂い、周囲一帯が焦がしカラメルや綿菓子のような甘い香りに包まれる性質を持っています。控えめな花と、甘い芳香を放つハート型の葉という二面性こそが、この木が持つ本来の植物学的魅力です。
気になる愛染かつら花言葉ですが、カツラの木自体には「不変」「不屈」「誠実」という言葉が託されています。厳しい冬を越えて毎年寸分違わず芽吹き、千年以上も命をつなぐ巨木の生命力に由来するものであり、これが後述する男女の「変わらぬ愛」の象徴へと昇華していきました。