厳しい自然環境下で捜索を展開した北海道警察山岳遭難救助隊の隊員たちは、滑走沢の過酷さを「一度迷い込めば生きて戻るのが難しい天然の檻」と表現する。現場で鑑識や現場検証を担当した遭難救助捜査官の手記には、地上からは見えない樹海の中に突如現れた巨大な「SOS」の木文字を見たときの衝撃が記されている。
大型の倒木を何本も運んで築かれた文字は、地上で身動きが取れなくなった遭難者が、上空を旋回する捜索ヘリコプターに生存を知らせるための命がけの叫びであった。山岳における救助活動の困難さと、情報伝達の限界が突きつけられた瞬間でもあった。