英語学習者が真っ先に思いつきがちな「What nationality are you?」という表現。文法的には何一つ間違っていない。しかし、日常会話でこれをそのまま使うと、まるで入国審査官にパスポートを提示させられているかのような威圧感と事務的な冷たさを相手に与えてしまう。国籍(nationality)は法的・行政的な身分事項であり、カフェや立食パーティーの雑談で唐突に尋ねる話題としては重すぎるのだ。
さらに危険なのが「What are you?」という短縮表現である。「あなたは何者(何人)ですか」と聞きたい意図だったとしても、英語圏では「あなたは何の生き物ですか」「人種的に何に分類されるのですか」という極めて非人間的で侮蔑的な響き(Othering:他者化)を帯びる。絶対に口にしてはならない典型的なNGフレーズだ。
また、アジア系アメリカ人や英国生まれの移民三世に対して「Where are you from?」と尋ね、「California」と返された後に「No, where are you REALLY from?(いや、本当はどこの出身?)」と重ねて聞く行為も、相手のネイティブとしてのアイデンティティを否定する「マイクロアグレッション(無意識の差別)」とみなされる。言葉のチョイスには、発話者が想像している以上の文脈が付きまとう。