本作を語る上で避けて通れないのが、ヒロイン・坂井育未を演じた裕木奈江さんに対する異様なまでのメディア・バッシングです。ドラマ放送中から女性週刊誌やワイドショーを中心に「女が嫌う女」「あざとい」「男を惑わす悪女」といった論調で連日激しいネガティブキャンペーンが展開されました。
バッシングが過熱した主たる要因は、裕木さんの卓越した演技力と、彼女特有のアンニュイで無防備な佇まいが、当時の女性視聴者の恐怖や嫉妬心を極度に刺激した点にあります。役柄と演者本人のキャラクターが意図的に混同され、メディアが視聴率や部数獲得のために「バッシングの構図」を煽り立てたことが取材記録からも明らかになっています。
当時のインタビューや関係者の証言によると、裕木さん自身は理不尽な集中砲火に深く傷つきながらも、女優としての表現を真摯に追求し続けていました。しかし、過熱する報道被害から距離を置くため、後に活動の拠点を海外へ移す決断を下します。
渡米後の裕木さんは、2006年に巨匠デヴィッド・リンチ監督の映画『インランド・エンパイア』に出演。さらに2017年には世界的大ヒットドラマの続編『ツイン・ピークス The Return』で主要キャラクターのナイド役を怪演し、世界的な称賛を浴びました。理不尽なメディアスクラムを実力一本で乗り越え、国際的評価を獲得した彼女のキャリアは、現代のメディアリテラシーの観点からも極めて高く再評価されています。