海外からの旅行者が日本の喫茶店でナポリタンを目にした際、最も驚く料理の一つがこのナポリタンです。ナポリタンイタリアにない理由には、イタリア伝統のパスタ哲学との根本的な乖離があります。
本場イタリアの食文化において、パスタの絶対条件とされるのが中心にわずかな芯を残す「アルデンテ」の茹で加減です。これに対し、日本のナポリタンは麺を一晩寝かせて柔らかくし、フライパンでしっかりと炒め上げます。さらに、イタリア料理の規範においてパスタにケチャップを使用することは「伝統への冒涜」とすら捉えられます。
ナポリ現地にはトマトソースパスタである「スパゲッティ・アル・ポモドーロ」は存在しますが、ピーマン、玉ねぎ、ソーセージやハムをケチャップで炒めた料理は存在しません。ナポリタンは、海外の食文化を柔軟に取り込み、日本人の味覚に合わせて独自に再構築した横浜洋食発祥の完全なオリジナル料理なのです。