海中探査艇の遠隔操作無人探査機(ROV)が撮影した深海での高解像度映像を確認すると、ニュウドウカジカの本来の姿は驚くほどスマートで精悍です。頭部は丸みを帯びているものの、輪郭はシャープに引き締まり、つぶらな瞳と滑らかな体表面を持つ、まさに「深海のカジカ」らしい堂々たる魚の造形をしています。
ここで多くの人が混乱するのが、英語圏で呼ばれる「ブロブフィッシュ(Blobfish)」と日本の「ニュウドウカジカ」の定義の違いです。学術的な分類と生態スペックを比較した以下のデータテーブルで、その実態を整理します。
分類学上、日本近海や北太平洋に生息する大型種が「ニュウドウカジカ(Psychrolutes phrictus)」であり、オーストラリアやニュージーランド近海で写真撮影され「世界一醜い」と話題になった種は同属の近縁種である「Psychrolutes microporos」です。しかし、英語圏ではウラナイカジカ科(Psychrolutidae)に属するゼラチン質の深海魚を包括して「Blobfish(ブヨブヨした魚)」と呼ぶため、現在ではニュウドウカジカもブロブフィッシュの代表格として同義で扱われています。
生態面における最大の強みは、「究極の省エネ戦略」です。深海は光が届かず餌が極めて乏しい過酷な世界です。ニュウドウカジカは重い筋肉や骨格を削ぎ落とし、身体の比重を海水とほぼ同じに保つことで、ヒレを激しく動かさなくても海底すれすれをホバリングできます。海底にじっと佇み、目の前を通りかかった深海性のカニ、エビ、ウニ、貝類などを口を大きく開けて丸呑みにする待ち伏せ型の捕食スタイルを徹底しています。