御柱祭を巡っては、インターネット上で「女人禁制ではないのか」「参加資格はどうなっているのか」といった疑問が頻繁に取り沙汰されます。歴史的背景と現代の運用実態にはいくつかの明確な違いがあります。
古来、神道における血やケガレの観念から、多くの山岳信仰や荒祭りで女性の立ち入りが制限されてきました。御柱祭においても、かつては御柱に直接乗る「乗り手」や特定の神事への参加資格は男性氏子に限られていた歴史があります。しかし現代においては、綱を曳く一般曳行への女性や子どもの参加は広く認められており、地域の一体感を醸成する祭礼として変容を遂げています。ただし、現在でも伝統的な儀礼の中心や危険を極める乗り手役には厳格な地域の掟が存在し、部外者が無秩序に参加できるものではありません。
また、諏訪地方には古くから「物忌み(タブー)」にまつわる強烈な民俗伝承が息づいています。
1. 御柱年の結婚式禁令
長野県下や山梨県北部では、古くから「御柱の年には婚礼を挙げてはならない」と言い伝えられてきました。神事に全精力を注ぎ込むべき年に私的な祝儀を重ねることを忌み嫌った先人の教えであり、現代でも年配層の間で根強く意識されています。
2. 葬儀を先送りする「物忌令」の知恵
地域関係者の伝承や民俗資料によると、かつては「御柱期間中に身内に不幸があっても、神事を穢さないため、また祭りに参加するために葬儀を公にしない(死んだことにしない)」という『物忌令』を逆手にとった慣習が存在しました。神に対する極限の熱誠と、祭りを何よりも優先する諏訪人の気質を象徴するエピソードです。