運動会やお祝いの定番だったチューリップ唐揚げが、なぜ日常の買い物で見当たらなくなったのか。精肉業界や中食市場の流通データを追跡すると、単なるブームの移り変わりだけではない構造的な背景が浮かび上がってきます。
最大の理由は、精肉加工における圧倒的な「人件費と手間(タイムコスト)」の増大です。チューリップ唐揚げは、鶏の手羽先や手羽元の骨と肉を切り離し、肉を先端にくるりと裏返して丸める特殊な手作業を要します。かつて町に個人経営の精肉店が多かった時代は、店主が店先で丁寧に包丁を入れて付加価値として販売していました。しかし、現代の食品スーパーでは人手不足とバックヤードの効率化が進み、1本ずつ手作業で加工するコストが見合わなくなってしまったのです。
2つ目の理由は、消費者の「骨なしチキン(タイパ志向)」への劇的なシフトです。コンビニ各社が展開する骨なしフライドチキンや、もも肉・むね肉のカット済みから揚げ用パックが主流となったことで、生ゴミとして骨が出る骨付き肉を家庭で敬遠する層が増加しました。「手が汚れる」「骨の周りを食べるのが面倒」という現代の簡便化ニーズに押され、スーパーの売り場スペースが縮小していったという経緯があります。
3つ目は、輸入冷凍ブロイラー加工品の規格化と流通構造の変化です。外食チェーンや総菜工場では、自動加工ラインに乗せやすい規格肉が重宝されます。手作業の多いチューリップ型は工場での大量生産にもコストがかかるため、一般的なから揚げやナゲットへと生産ラインが置き換わっていきました。