1953年にジェームズ・ワトソンらがDNAの二重らせん構造を発見して以来、人類は生命の暗号を解読する長い旅を続けてきた。20世紀末に始まったヒトゲノム計画は、莫大な予算と歳月を投じて人類共通の設計図を読み解く巨大プロジェクトだった。
日本の理化学研究所をはじめとする国際チームの献身的な研究は、現在の精密医療の基盤を作り上げた。莫大な時間とコストを要したゲノム解読は、今や数時間、数万円程度で実行できるテクノロジーへと進化を遂げている。
こうして研究室の基礎科学だった知見は、臨床現場で患者一人ひとりの発症リスクや薬効を予測するゲノム医療へと昇華した。がん化学療法における分子標的薬の選定や予防的切除など、個人の遺伝的特性に応じた治療法がすでに実用化されている。