法学や行政の便宜的な線引きを一掃し、生物そのものの構造に目を向けると、景色は一変する。「近代分類学の父」と称されるスウェーデンの博物学者カール・フォン・リンネが体系化した近代生物学、そして現代の植物形態学において、果実(Fruit)の定義は揺るぎない。
植物形態学の観点では、花の受粉を経て成熟した「子房」およびそれに付随する組織であり、内部に種子を抱くものがすべて果実となる。この定義を適用すると、食卓の常識は完全に解体される。キュウリ、ナス、ピーマン、カボチャ、オクラは言うに及ばず、トウモロコシの粒やサヤエンドウのサヤに至るまで、植物学的にはすべて「果物(果実)」なのだ。
対照的に、植物形態学における野菜とは、植物の栄養器官を指す。根を食べるニンジンやゴボウ、茎を食べるアスパラガスやタケノコ、葉を食べるレタスやホウレンソウ、そして花の蕾を食べるブロッコリー。つまり、次世代の命となる種子を育む器であるか、それとも植物自身の生命活動を支えるボディの一部であるか。これが生物学が突きつける最も純粋な境界線だ。