サカナクションが2015年9月に発表した11枚目のシングル「新宝島」。公開されたミュージックビデオは、従来のバンドが持っていた文学的かつクールなイメージを根底から覆すものでした。画面いっぱいに現れるレトロなフォントの曲名テロップ、無表情のメンバーが横並びでリズミカルに踏むステップ、そして色とりどりのポンポンを振るチアリーダーたち。この構図を見た視聴者の多くが直感したのは、かつて土曜夜8時に日本中のお茶の間を釘付けにした『8時だョ!全員集合』オープニングの空気感そのものでした。
結論から明かせば、この類似は偶然の産物ではなく、制作陣が明確な意図を持って仕掛けた本気のオマージュです。関係者の証言や当時の制作ドキュメントによると、映像を手掛けたクリエイティブディレクターの田中裕介氏と山口一郎氏は、企画段階から昭和の歌番組や公開収録コント番組の持つ「圧倒的な熱量と陽のエネルギー」を再現することを目指していました。
なかでも目を引く「左右に足を交差させながら軽快に跳ねるステップ」は、ドリフターズのメンバーがいかりや長介氏を先頭に、法被(はっぴ)姿で舞台狭しと行進していたあの伝説の振り付けを現代のフォーマットへ見事にトランスレートしたものです。あえて最新鋭のデジタル合成やCGに頼らず、固定カメラに近い画角と生身の身体性で勝負したからこそ、昭和を知る世代には強烈な郷愁を、デジタルネイティブの若い世代には見たこともない新鮮なインパクトを与えることになりました。