黒のボルサリーノ帽にレザージャケット。ギラギラとした欲望と、どこか物悲しい孤独感を背負った男、ボルサリーノ2。この強烈なキャラクターはいかにして生まれたのか。当時の撮影現場を知るスタッフや関係者の証言を紐解くと、そこには名優・田中邦衛の並々ならぬ役作りへのこだわりが存在した。
当初の台本では、単なる惨酷な敵役として描かれていたという。しかし、田中邦衛は「ただの悪党にはしたくない」と監督に掛け合った。自ら小道具の帽子や衣装の着こなしを提案し、セリフの間や目線の動きに独特の哀愁を注入したのだ。トラックのハンドルを握る際の手つきひとつにも、過酷な街道を生き抜いてきた男の年輪を表現する工夫が凝らされた。過酷を極めたロケーション撮影の中で彼が見せた徹底的なプロ意識こそが、単なる悪役に留まらない唯一無二の悪ヒーロー像を完成させた秘訣である。