彼女の歩んできた軌跡を振り返ると、日本の家庭料理が抱えていた「手間暇をかけることこそ美徳」という固定観念に対する挑戦の歴史であることがわかります。
京都府出身の奥薗壽子のプロフィール・経歴において特筆すべきは、辻調理師専門学校のような専門機関で調理理論を体系的に学ぶ以前に、二人の子どもを育てる専業主婦としてのリアルな生活実感をベースに独自の調理法を編み出した点です。「毎日続く台所仕事を、いかに楽に、かつ栄養満点に仕上げるか」という切実な日常の課題が、彼女の発明の母体となりました。
彼女の名を一躍全国区にしたのは、1990年代後半から2000年代にかけて出演した日本テレビ系『午後は○○おもいッきりテレビ』やテレビ朝日系『いきなり!黄金伝説。』の節約料理対決企画でした。当時、世間が抱いていた「家庭料理は出汁を丁寧に取り、下茹でを欠かさないもの」という常識を真っ向から破り、「ズボラ料理の元祖」として一大旋風を巻き起こしました。
私生活では、家族(夫や子どもたち)との対話を大切にする家庭人としても知られています。自著やインタビューでも語られている通り、彼女のレシピ開発の原点は常に「疲れて帰ってきた家族が笑顔で完食し、作り手も疲弊しない食卓」にあります。この生活者目線こそが、30年近く支持が揺らがない最大の根拠です。