野村昭子さんの知られざる横顔として、極めて高いインテリジェンスと恵まれた実家の出自があります。彼女は戦前の東京薬学専門学校女子部(現・東京薬科大学)を卒業しており、正真正銘の国家資格を持つ「薬剤師」でした。
戦時中のエピソードとして、実家の防空壕は電灯や七輪が完備され、8畳もの広さがあったことが記録されています。そこには女学校時代の恩師から「一生持てる良い辞書を買いなさい」と言われて購入した分厚い辞書が持ち込まれていました。戦時下においても学問や文化を重んじる裕福で教養ある家庭環境が、彼女の知性と品格を形作った土台です。
薬剤師としての安定したキャリアを捨てて俳優座養成所へ飛び込んだ野村さんですが、生涯にわたって築き上げた財産は相当な規模に上ると推定されます。都内の土地・建物などの不動産に加え、半世紀以上にわたるトップバイプレイヤーとしての出演ギャラや再放送に伴う二次使用料の蓄積がありました。
子供や配偶者がいない単身者の相続において、民法上の第1順位(子)、第2順位(直系尊属=両親など)が存在しない場合、遺産相続権は第3順位である兄弟姉妹、あるいはその代襲相続人である甥・姪に移ります。野村さんの場合も、生前の公正証書遺言の有無に関わらず、長年見守り続けてきた親族関係者の間で法的手続きに則った財産承継が行われたと見られています。