同位体の本質を掴む鍵は、原子番号と質量数の関係性を完全に数式レベルで理解することです。原子の正体は、中心にある「陽子」と「中性子」からなる原子核と、その周りを回る「電子」で構成されています。
ここで絶対に揺るがない大原則があります。
・原子番号 = 陽子の数 =(中性原子の)電子の数
・質量数 = 陽子の数 + 中性子の数
元素の化学的性質(どのような結合を作り、どう反応するか)は、最外殻にある電子の配置によって99%決定されます。陽子の数が同じであれば電子の数も同じになるため、中性子の数が多少増減しても化学的な挙動はほとんど変わりません。これが「同位体同士の化学的性質がほぼ同じ」と言われる物理的根拠です。
同位体の具体例として最も頻出なのが水素(H)です。地球上の水素の約99.988%は中性子を持たない軽水素(${}^1\text{H}$、陽子1個・中性子0個)ですが、極めてわずかに中性子を1個持った重水素(${}^2\text{H}$ または D、デューテリウム)、中性子を2個持った三重水素(${}^3\text{H}$ または T、トリチウム)が存在します。これらは中性子の数が異なるため質量数は1、2、3と大きく異なりますが、いずれも酸素と結合して水($H_2O$ や重水)を形成します。
さらに見逃せないのが、原子核が不安定なために放射線を放出して別の原子核へと崩壊していく放射性同位体(ラジオアイソトープ)です。
例えば炭素の同位体である炭素14(${}^{14}\text{C}$)は、約5730年の半減期で窒素14(${}^{14}\text{N}$)へと崩壊します。大気中の二酸化炭素に含まれる ${}^{14}\text{C}$ の比率は生物が呼吸や光合成を行っている間は一定に保たれますが、個体が生命活動を停止すると新たな摂取が止まり、組織内の ${}^{14}\text{C}$ は一定のペースで減少していきます。この性質を利用したのが考古学や地質学で不可欠な「炭素14年代測定法」です。また、医療分野ではコバルト60(${}^{60}\text{Co}$)によるがん治療や、ヨウ素131(${}^{131}\text{I}$)による甲状腺疾患の検査など、放射性同位体は現代社会のインフラとして深く組み込まれています。
計算問題対策として必須となるのが同位体存在比です。周期表に記載されている塩素(Cl)の原子量は「35.5」という中途半端な小数になっています。これは質量数35の ${}^{35}\text{Cl}$(存在比約75%)と、質量数37の ${}^{37}\text{Cl}$(存在比約25%)が自然界に一定の比率で混在しているためです。加重平均として、以下の計算式から原子量が導き出されます。
$$35 \times \frac{75}{100} + 37 \times \frac{25}{100} = 26.25 + 9.25 = 35.5$$
「原子番号は整数、質量数も整数だが、原子量は同位体の存在比を反映した平均値であるため小数になる」という因果関係は、難関大入試でも頻出の基本事項です。