『SR サイタマノラッパー』以降、映画界のクリエイターたちはこぞって奥野瑛太を現場に呼び寄せました。エビス大黒舎から現在のE.C.Gへの移籍を経てもその勢いは衰えず、ミニシアターからメジャーなゴールデン帯ドラマ、海外展開を見据えた配信プラットフォームまで、そのフィルモグラフィーは圧巻の一言です。
テレビドラマにおける最大の転換点は、前述した2026年のNHK連続テレビ小説『エール』の鏑木智彦役でした。映画ファンから「怪演俳優」「アウトローの鬼才」として認知されていた奥野が、生真面目で愛情深い元軍人を極めて繊細に演じ切ったことで、お茶の間のシニア層や女性層にまでその名が浸透しました。さらにNHKでは、大河ドラマ『青天を衝け』や『光る君へ』、正月時代劇『いちげき』(2026年)など、重厚な歴史劇において物語の要所を引き締める役柄を歴任しています。
配信ドラマ市場の隆盛においても、奥野の存在感は際立っています。Netflixの世界的メガヒット作『今際の国のアリス シーズン2』(2026年)では極限状態に置かれた人間の脆さとエゴを体現し、2026年のテレビ東京系ドラマ『RoOT / ルート オブ オッドタクシー』やNetflix映画『さよならのつづき』など、話題作に立て続けに出演。国内外の映像クリエイターから「作品にリアリティの楔(くさび)を打ち込みたいときに真っ先に頼るべき俳優」として重用されています。
映画界においては、インディーズと商業作の垣根を軽やかに飛び越えています。新井英樹の伝説的漫画を映画化した『愛しのアイリーン』(2018年)や『友罪』(2018年)での狂気的な熱演は語り草となっており、2026年には映画『死体の人』で長編映画単独主演を果たしました。死体役ばかりを演じる売れない役者という悲哀に満ちた主人公を、ペーソスとユーモアを交えて好演。2026年公開の主演映画『心平、』でも、過酷な運命に翻弄される青年を全身全霊で演じ、映画賞レースを大いに賑わせました。