現在のストリートを席巻しているのは、味の完成度とビジュアルのインパクトを両立させた進化系スイーツだ。手持ちで楽しめる焼きたてのミルフィーユや、注文を受けてから目の前で仕上げる濃厚なモンブランスタンドには長蛇の列ができる。湯気を立てる極厚の台湾カステラや、フルーツを丸ごと閉じ込めた飴細工など、スマートフォンのカメラを構えながら頬張る若者の姿が絶えない。
だが、表通りの喧騒から一本外れた路地にこそ、大須の真骨頂がある。創業から半世紀を超える喫茶店で提供される小倉トーストは、絶妙な塩気とバターのコクが染み込んだ分厚いパンが主役だ。地元民が「ここは教えたくない」と口を揃える路地裏の串揚げ屋や小料理屋では、職人が手際よく揚げる揚げたての串を片手に、昼から静かに杯を傾ける常連客の姿が見られる。派手なトレンドと静かな日常が数メートルの距離で隣り合っている。