佐藤愛子が手掛けた数々の自伝的エッセイは、長年にわたり出版業界で異例のヒットを記録し続けてきた。小学館が発行する女性誌『女性セブン』での連載から火がついた『九十歳。何がめでたい』は、高齢化が進む日本社会において「長寿を祝うばかりが人生ではない」という痛快な本音を放ち、累計100万部を超える社会現象となった。
この大ヒットを受け、東映が映像化に踏み切った際の判断は的確だった。老い、孤独、家族の確執という重くなりがちなテーマを、徹底してエンターテインメントへと昇華させたのだ。活字から映像へと形を変えても失われなかったのは、母娘の間に流れる飾らない生活の息遣いである。
出版と映像という異なるメディアが共鳴し合い、佐藤愛子の毒舌と杉浦あおいの日常は、時代を超えて幅広い世代へと届くことになった。