「味噌汁を飲むのをやめ、醤油も数滴に抑えているのに血圧が下がらない」――こうした切実な悩みには、明確な生理学的理由が存在します。医学界で知られる「食塩感受性」の個人差です。
日本高血圧学会の知見や各種臨床研究によると、食塩摂取量の増減によって血圧が敏感に変動する「食塩感受性」の持ち主は、本態性高血圧患者全体のおよそ40〜50%にとどまります。残る半数の「食塩非感受性」タイプは、いくら極端な減塩に耐え忍んでも、期待通りの降圧効果を得られにくい構造になっています。
高血圧食事療法ガイドラインが定める食塩摂取目標量「1日6g未満」は極めて重要な指標ですが、それ以上に決定打となるのが「ナトリウム(塩分)とカリウムのバランス(Na/K比)」です。過剰な塩分を摂取しても、それを体外へと汲み出すポンプ役(カリウム)や、血管平滑筋の緊張を緩めるミネラル(マグネシウム)が枯渇していれば、血液浸透圧を保つために循環血液量は増大し、血管壁への内圧は高止まりし続けます。
つまり、現代の血圧対策において最も避けるべきは「塩を抜くだけで、出す栄養を摂らない」という片手落ちのアプローチなのです。