自室のソファでNetflixのコンテンツを無限に消費できる時代において、なぜ人々はわざわざ深夜の街へ繰り出し、マイクを握るのか。その答えは「偶発的な体験」と「生のリズム」への飢餓感にある。アルゴリズムによって最適化されたデジタルなエンターテインメントは快適だが、予期せぬ感動やハプニングを生み出すことは稀だ。
薄暗いバーカウンターで隣に座った見知らぬ誰かが、思いがけず自分の大好きな80年代のロックナンバーを歌い出す。思わずハモり、グラスを掲げて乾杯する。デジタル空間では決して味わえないこの肉体的な熱量こそが、タイパや効率性を超えた「本当の豊かさ」として現代人の心に刺さっているのだ。