「辛いなら仕事を辞めればいい」という外部からの視線に対し、過労死や労働心理学の専門家は「過労とうつ病の極期には、退職という選択肢そのものが脳内から消滅する」と警鐘を鳴らします。
1日2〜3時間の極端な睡眠不足と過重労働が数ヶ月続くと、脳の前頭前野の機能が著しく低下します。この状態に陥ると以下のような心理的トラップが同時に発動し、自発的な回避行動が取れなくなります。
- 思考停止と判断力の消失:「辞める」という決断には、退職届の提出、上司との交渉、転職活動、生活費の計算など膨大なエネルギーが必要となるため、脳が処理を拒絶する。
- 正常性バイアスの誤作動:「この山を越えれば楽になるはず」「みんな同じように耐えている」と過酷な現実を正当化してしまう。
- 自己責任論の内面化:過労により認知が歪み、「業務が終わらないのは自分の能力が足りないせいだ」と自身を責め続けるループに陥る。
- 視野狭窄(トンネルビジョン):目の前のタスクを処理すること以外の未来が想像できなくなり、「死ぬか、働くか」の二者択一に追い詰められる。
高橋まつりさんは真面目で責任感が強く、学生時代から努力を重ねてきたからこそ、「途中で投げ出してはいけない」「期待に応えなければならない」という強い思いが、皮肉にも危険信号を覆い隠す要因となってしまいました。