日本のぶどう栽培において、「大粒で皮が薄く、そのまま食べられる欧州系ぶどう」の国産化は長年の悲願だった。しかし、欧州種は日本の雨が多い気候に弱く、病気になりやすいという致命的な弱点を抱えていた。この壁を突き崩したのが、国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」のプロジェクトだ。
ブリーダーの山田昌彦氏を中心とする研究チームは、病気に強い米国種と食味に優れる欧州種の交配を何千回と繰り返した。その末に誕生した有望系統「安芸津21号」に、芳香豊かな「白南」を掛け合わせ、三十年以上の歳月を経て結実したのがシャインマスカットである。あの噛んだ瞬間の爽快な歯ごたえと渋みの少なさは、研究者の執念が生み出した奇跡の産物だ。