かつてのように、同じ会社に長年留まっていれば自然と給与が上がっていく時代は終わった。自分の適正年収を正確に把握し、中央値の壁を自力で突破しようとする労働者のあいだでは、転職を通じたキャリア開発と収入改善の動きが一般化しつつある。この傾向は人材サービス業界の動向にも色濃く反映されている。
転職エージェント大手のdodaやリクルートホールディングスが公表する最新の市場データによると、IT人材や建設、医療、専門スキルを持つ経験者の提示年収は底堅い伸びを見せている。また、社員のリアルな口コミや年収データを可視化するOpenWorkのようなプラットフォームの浸透により、求職者は企業が打ち出す表面的な平均年収に惑わされず、残業時間や昇進ペースを踏まえた「実質的な年収分布」を事前に見極められるようになった。給料が上がるのを待つ受動的な姿勢から、自身の市場価値を武器に能動的に環境を選ぶ選択へと潮流は変わりつつある。