人間宣言の発布は、宮城(皇居)の奥深くに鎮座していた天皇の姿を国民の目の前に引き出す決定的な引き金となりました。その象徴的な出来事が、1946年2月から約8年半をかけて行われた「昭和天皇の全国巡幸」です。
スーツに中折れ帽という平民的な装いで被災地や炭鉱、工場を訪れた昭和天皇は、国民一人ひとりに「あ、そう」と声をかけ、復興に汗を流す人々を激励しました。かつては直視することすら許されなかった「現人神」が、粗末な作業服の労働者と握手を交わす姿は、国民に計り知れない希望と感動を与えました。
地方巡幸の熱狂的な歓迎風景は、日本国憲法第1条に定められた「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」という新たな天皇像を、法文の上だけでなく国民の心情において定着させる契機となったのです。