音楽を生業とするプロ奏者の懐事情は、どのような形態で活動しているかによって全く異なります。一般的に安定した高収入と思われがちなオーケストラ団員の年収ですが、その実態は楽団ごとの財務基盤に大きく依存しています。文化庁の助成金や企業スポンサー、定期会員数を豊富に抱える都内の主要プロオーケストラ(NHK交響楽団、読売日本交響楽団、東京都交響楽団など)の正団員であれば、30代から40代で年収700万〜1,000万円前後に達するプレイヤーも存在します。
しかし、これは国内でも一握りのトップ層に限られた話です。日本のプロ楽団の給与水準を俯瞰すると、地方都市を拠点とする楽団や新興オーケストラの場合、固定給制であっても基本給が月給18万〜25万円程度、賞与込みで年収300万〜450万円前後に留まるケースが珍しくありません。さらに、1公演ごとの契約となる客演奏者やシーズン契約団員の場合、年収200万円台前半で生活を維持するために別の仕事を掛け持ちせざるを得ない現場の実態があります。
一方、特定の団体に所属しないフリーランス演奏家のギャラ相場は、完全な実力主義と人脈の世界です。冠婚葬祭やホテルラウンジでの演奏、パーティーでの依頼演奏では1現場あたり1万5,000円〜3万円程度が標準的な単価となっており、リハーサル拘束時間や交通費を含めると時給換算で決して高水準とは言えません。アニメやゲーム、映画音楽の収録を支えるスタジオミュージシャンの報酬単価は、1セッション(3〜4時間)で2万5,000円〜5万円前後が一つの目安ですが、スタジオワークの需要自体が打ち込み音源の進化に伴い精鋭化しており、コンスタントに月数十万円を稼ぎ出す奏者は業界内でも固定化されています。