名物弁当の背景には、日本の鉄道史に残る過酷な難所の存在があった。群馬県安中市に位置するJR信越本線の横川駅。ここは、最大傾斜66.7パーミルという急勾配が立ちはだかる碓氷峠への入り口だった。
列車が峠を越えるためには、特殊な補助機関車を連結・解放する必要があり、横川駅では数分間の停車時間が生じた。このわずかな隙間時間に、立ち売り販売員がホームで威勢よく声を張り上げ、窓越しに手渡された。1997年の長野新幹線開業に伴い、東日本旅客鉄道(JR東日本)の横川〜軽井沢間は廃線となったが、ホームでの情緒あふれる光景は今も語り継がれている。