今回の発見の引き金となったのは、近年新たにデータベース化された未公開の発掘データである。文化庁が中心となって進める全国遺構アーカイブ事業により、これまで各自治体に分散していた数万件に及ぶ土壌密度および炭化材の分布データが一元化された。これにより、古代建築の温熱環境シミュレーションが初めて本格的に可能となったのだ。
最新の熱力学解析によると、壁面に盛り上げられた盛土と、床下に敷き詰められたバラス(砕石)および炭のレイヤーが、地熱を室内へ効率よく伝える熱交換システムとして機能していた。従来の考古学では単なる排水溝と考えられていた外周の掘り込み構造も、実は冷気の侵入を遮断するサーマルブレイク(熱遮断帯)として設計されていた可能性が高い。寒冷期の北風を遮り、太陽光を効率よく採り入れる南向きの傾斜角。これら全てが偶発的な産物ではなく、環境に最適化された明確な設計思想に基づいていた。