ガトリンのキャリアを語る上で避けて通れないのが、2001年と2006年に課されたドーピング処分だ。特に2006年の陽性反応により、一時は最大8年の出場停止処分を受け、彼のキャリアは完全に終わったと誰もが信じた。復帰後も世間は彼を「薬物使用者の象徴」として扱い、メディアも徹底的なバッシングを展開した。
スポーツ倫理の観点から見れば、ルール違反に対する厳しい視線は当然の帰結である。しかし、処分の全期を全うし、厳格な検査を受け入れながらトラックに戻ってきた男を、競技界はどう受け止めるべきだったのか。ガトリンの存在は、「一度犯した過ちとアンチドーピング機構のルール、そして選手の復帰権」という重い問いを、今なおスポーツ界に突きつけ続けている。