なぜ多くの人が、非科学的な地震前兆現象を信じ込んでしまうのでしょうか。ここには人間の脳が陥りやすい認知バイアスという盲点が存在します。
第一の誤解は「後方視的バイアス(確証バイアス)」です。日本列島およびその周辺では、有感・無感を合わせると年間1万回以上の地震が発生しています。つまり、誰かが「数日以内に揺れる」と予言を打ち続ければ、日本国内のどこかで発生した地震と偶然一致する確率(ヒューリスティックの合致)は非常に高くなります。人々は「的中したように見える事例」だけを記憶し、無数に外れた投稿を忘れ去ってしまうのです。
第二の盲点は「前兆と結果の因果関係の逆転」です。大きな地震が起きた後、「そういえば数日前の夕焼けが不気味だった」「飼い犬が夜中に吼えていた」というエピソードが後付けで語られます。しかし、夕焼けが不気味でも、犬が吼えても、何も起きなかった日は無数に存在します。事後に結びつけられた記憶を「前兆の法則」として一般化することは、科学的観察において初歩的な誤りです。