グレート・ムタの入場は、プロレス界における最高の「劇場型エンターテインメント」と称されます。その完成度を支えていたのが、入場曲の展開と入場シーン・毒霧演出の完璧なシンクロです。
花道の奥から煙が立ち込め、不穏なイントロが響き渡る中、頭巾や着物、異形のマスクを纏ったムタがゆっくりと姿を現します。足を引きずるような独特の歩法でリングへ向かう間、楽曲の緊張感は徐々に高まりを見せます。
そしてコーナーポストに駆け上がり、曲のブレイクに合わせて天高く吹き上げられる緑や赤の毒霧。ライトを浴びて霧が宙に舞い散る刹那、楽曲が最も激しいサビへと展開する演出は、視覚と聴覚が完全に合一した奇跡の瞬間でした。計算し尽くされた間合いと音のダイナミズムがあったからこそ、ムタの入場は30年以上にわたり色褪せることのない伝説となったのです。