「どちらのボールが実質的な標準なのか」という問いに対する答えは、所属カテゴリーと出場を目指す大会の歴史的背景に直結しています。高校バレー界の最高峰である「春の高校バレー(全日本バレーボール高等学校選手権大会)」では、長年にわたりモルテンのボールが大会公式試合球として契約を継続しています。オレンジコートと呼ばれる東京体育館のメインフロアで舞う白・赤・緑のカラーリングは、高校生バレーボーラーにとって憧れの象徴であり、全国出場校の多くが日常練習からモルテンの「V5M5000」を常備しています。
一方、世界へと直結する国内最高峰「大同生命SV.LEAGUE」や天皇杯・皇后杯、そしてオリンピックをはじめとする国際バレーボール連盟(FIVB)主催大会では、ミカサの「V200W」が唯一無二の公式球として指定されています。日本代表(龍神NIPPON・火の鳥NIPPON)の強化合宿や国際試合で使われるのも全てミカサです。このため、実業団や将来的に代表を目指すハイレベルなユース世代では、ミカサ球の軌道変化に身体を適応させることが必須課題となっています。
さらに現場を悩ませるのが、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)や中学校の大会(全中)におけるローテーション運用です。インターハイでは男子と女子で使用球が交代したり、年度ごとにメーカーが入れ替わる方式が採用されてきました。中学校の4号球(ミカサV400W vs モルテンV4M5000)でも、地区中体連の予選大会ごとに指定球が異なるケースが珍しくありません。このねじれ現象こそが、指導者や部活動の現場が両メーカーのボールを常備し、大会ごとに使い分ける決定的な理由となっています。