母の大谷加代子さんが大切にしたのは、家の中をいつでも「安全な基地」にすることだった。バドミントン選手としてスポーツの厳しさを知る彼女だからこそ、自宅では徹底してリラックスできる居心地の良い空気づくりに心を配った。叱ることは滅多になく、子供たちの話をじっくりと聞く姿勢を保ち続けた。
加代子さんの放つ言葉には、常に子供の自己肯定感を高める包容力があった。「無理をしすぎないでね」「あなたが楽しくプレーできているならそれが一番」。過熱する周囲の狂騒から息子を守り、常に変わらぬ母親の愛で包み込む。過剰な介入をせず、ありのままを受け入れるその温かな接し方こそが、巨大なプレッシャーに直面しても折れないしなやかな心の軸を作ったのだ。