ネット上の自己啓発記事やSNSで頻繁に拡散されているアドバイスの中には、悪循環に苦しむ人をさらに追い詰める有害な誤解が少なくありません。報道現場のファクトチェックに基づき、代表的な2つの誤解を正します。
誤解1:「ポジティブ思考(引き寄せの法則)で全て好転する」
「悪いことを考えているから悪いことを引き寄せるのだ。感謝して前向きに生きよう」という言説は、苦境にある人間にとって猛毒となり得ます。心理学においてこれは「有毒なポジティビティ(Toxic Positivity)」と呼ばれます。危機的状況下で無理にネガティブな感情に蓋をすると、心理的抑圧が働き、コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌が長期化します。必要なのは無理やり笑顔を作ることではなく、「今、事態は危機的であり、自分は限界を迎えている」という事実を冷徹に受容する(ラディカル・アクセプタンス)ことです。
誤解2:「逃げずに最後まで立ち向かうことが美徳である」
「どんな環境でも3年は耐えろ」「途中で投げ出すと次の場所でも同じことが起きる」という日本社会特有の根性論も、連鎖を悪化させる主因です。崩壊しつつあるブラック企業や、モラルハラスメントが横行する人間関係においては、「耐えること」は単なる搾取への加担に過ぎません。有害な環境にとどまり続けるほど、自己効力感は摩耗し、脱出のための気力すら奪われます。戦略的撤退(逃げること)こそが、連鎖を物理的に遮断するための最も合理的かつ勇気ある選択です。