時計の針を2011年に戻してみる。当時、富山県、石川県、福井県、神奈川県に展開していた「焼肉酒家えびす」は、「ユッケ1皿280円」という破格の価格設定で空前の大ヒットを記録していた。連日、ファミリー層や若者で賑わう店内。その成長スピードは焼肉チェーン業界でも異彩を放っていた。しかし、その成長モデルの裏には、あまりにも脆弱な衛生管理とコスト優先の歪みが潜んでいたのである。
同年4月、店舗で生の牛肉を食べた客が次々と激しい腹痛や下血を訴え、腸管出血性大腸菌(O111)による深刻な食中毒を発症。重篤な溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発し、死亡者は5人に達した。外食産業における安全神話を根底から揺るがしたこの惨事に対し、行政処分の命を受けた株式会社フーズ・フォーラスは、事件発覚からわずか1ヶ月余りで全店閉店へと追い込まれ、民事再生を断念して破産手続きへと追い込まれた。