スキャンダルが報じられた際、当事者のタレント側が「アカウントを乗っ取られた」「何者かによる不正アクセスで偽造された」と主張する光景を度々目にします。しかし、デジタルフォレンジック(電磁的記録解析)の現場視点から検証すると、この弁明の多くには致命的な矛盾が存在します。
ネット空間で流布される代表的な誤解と、その実態を整理します。
第一に、「ハッカーが遠隔操作でLINEのやり取りを盗み見た」という言説です。高度な標的型スパイウェア(ペガサスなど)の標的となる国家要人ならともかく、日本の芸能人の日常的な不倫や失言の流出において、そこまでのサイバー攻撃が仕掛けられるケースは極めて不自然です。調査報道機関に持ち込まれる証拠の大部分は、当事者の寝首を掻く形で身内から提供された生のキャプチャ画像です。
第二に、「画像加工ツールによる捏造」という主張です。確かに現在の画像編集技術や生成AIを用いれば、偽のトーク画面を捏造することは容易です。しかし、週刊誌の法務審査部は名誉毀損訴訟のリスクを回避するため、単一の画像だけで記事化することはまずありません。過去のスケジュール、当日の目撃証言、ホテルや飲食店の領収書、さらには音声データなど、複数の状況証拠と突き合わせることで裏付け取材を行っています。
「アカウントの乗っ取り」という説明は、世論の批判を一時的に逸らし、スポンサーへの契約解除ペナルティを軽減するための危機管理上の常套句として使われる側面が強く、技術的な実態とは大きく乖離しているのが現実です。