岡崎の器を決定づけているのは、まるで何万年もの年月をかけて形成された地層や鉱石を思わせる表面の質感だ。この質感を自らの手で再現するため、彼は極めて手間のかかる工程を重ねている。
成形された素地に、異なる性質を持つ泥(化粧土)を幾重にも塗り重ねる「化粧掛け」を施す。一度の焼成で終わらせるのではなく、本焼きを何度も繰り返す「重ね焼成」を敢行。炎のゆらぎや温度変化によって、下層の塗膜が表面へと浮き上がり、複雑で不規則な模様を形成していく。
赤と黒が魅せる陰影のコントラスト
彼のカラーパレットの中で特に強い強烈な個性を放つのが、「赤」と「黒」だ。鮮やかな朱赤ではなく、どこか枯れた味わいを持つ渋みのある赤。そして、漆黒の奥に金属質の輝きを隠し持つ重厚な黒。これらが複雑に絡み合い、器の表面に表情豊かな陰影を生み出す。
ひとつとして同じものが存在しない理由
重ね焼成のプロセスでは、不確定要素が大きく関与する。窯の中の置く位置、微小な釉薬の厚みの違いによって、生み出される模様はすべて異なる。量産品には絶対に不可能な「一期一会の表情」が、手にした者の所有欲を刺激してやまない。