この大乱闘は、突発的なアクシデントではなく、積み重なった複数の伏線が引き金を引いた必然の衝突でした。プロ野球乱闘事件簿の中でも特に語り継がれる理由として、以下の3つの要素が複雑に絡み合っていました。
第一に、前カードからの厳しい内角攻めの応酬です。当時の巨人と阪神は、主軸打者に対する厳しいインコース攻めを徹底しており、死球寸前の投球が続いていました。阪神側には「巨人の投手陣に主砲が狙われている」という強い被害意識があり、アリアス自身も極度の苛立ちを募らせていました。
第二に、両チームの指揮官が帯びていた強烈な闘争心です。「闘将」星野仙一監督は就任1年目にしてチームの意識改革を進めており、「巨人相手に絶対に引くな」と選手たちを鼓舞し続けていました。一方の原辰徳監督も若き指揮官として王座奪還を至上命題としており、両陣営のプライドがグラウンド上で火花を散らしていました。
第三に、入来祐作という投手の「負けん気の強さ」です。泥臭く気迫を前面に出す投球スタイルを持ち味としていた入来にとって、相手打者の威圧に屈して外角へ逃げることは自身の存在意義を否定することと同義でした。アリアスの威嚇に対して一歩も引かなかった姿勢こそが、事態を映画のワンシーンのような緊張感へと昇華させたのです。