山梨県笛吹市出身の辻村深月は、千葉大学教育学部在学中に執筆した長編ミステリ『冷たい校舎の時は止まる』で、講談社が主催する第31回メフィスト賞を受賞してデビューを飾りました。ペンネームの「辻」の字に「しんにょうの点が1つ」の字を用いるこだわりや、敬愛する綾辻行人の一字を拝受したエピソードは文芸ファンの間でも有名です。
2011年に『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年には短編集『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞を受賞。さらに2018年、学校に行けない中学生たちの連帯と謎を描いた『かがみの孤城』が史上最多得票で本屋大賞を受賞し、名実ともに国民的作家の地位を確立しました。
辻村作品が一貫して読者の心を捉えて離さない理由は、自身の手記や特番インタビューでも語られている「かつて子どもだった頃の自分、そして傷ついた経験を絶対に裏切らない」という誠実な創作姿勢にあります。教育学部出身ならではの多感な十代への観察眼と、社会の構造的圧力に翻弄される大人への解像度の高さが、唯一無二の物語体験を生み出しています。