館内に足を踏み入れると、まず手渡されるのが専用のICチップ入り端末(メディパスクリップ)です。来館者はこの端末を各展示台にかざしながら、自ら研究者や薬の分子となってミッションをクリアしていくストーリー仕立ての構成になっています。単なるパネル展示を読む旧来の企業PR館とは一線を画し、製薬会社体験型ミュージアムとしての完成度は国内トップクラスを誇ります。
展示フロアは1階と2階に分かれており、1階ではくすりの歴史や病気のメカニズム、2階では化学合成やバイオテクノロジーを駆使した創薬研究の最前線がインタラクティブに展開されます。巨大スクリーンに映し出される細胞や受容体に、タイミングを合わせて薬の成分を届けるアクションシミュレーションは、子どもだけでなく大人の知的好奇心を強烈に刺激します。
これほど高価なデジタル機材と洗練された空間演出を備えながら、第一三共くすりミュージアム入場料無料という完全フリー開放を貫いている理由は、同社が掲げる社会貢献(メセナ)活動と次世代科学教育の推進にあります。自社製品の露骨な宣伝を極力排し、生命科学の面白さやくすりの正しい知識を社会に還元する第一三共本社見学施設としての公共的使命が、この高いクオリティと無料運営の両立を可能にしています。