平安時代の貴族が親しんだ蹴鞠(けまり)から、江戸時代に庶民の愛玩品として広がった手まり。その歴史は千年以上にも及ぶ。しかし、21世紀後半を迎えた現在、毬が持つ意味合いは根底から覆りつつある。
発端は2026年秋、パリの有名メゾンが最新の秋冬コレクションにて「Mari」をテーマにした立体バッグやジュエリーを発表したことだった。芯材に植物由来のバイオプラスチックや廃棄布を使用し、手作業で幾何学模様を刺繍するそのプロセスは、徹底したサステナビリティと職人技の極致として世界中のファッション誌を飾った。
海外のアート市場における評価も高騰している。サザビーズやクリスティーズのオークションでは、名匠の手による一点物のヴィンテージまりが数万ドル(数百万円)で落札されるケースが相次ぎ、日本国外のプライベートコレクターによる買い占めすら噂されるほどだ。