「一斉授業を半分に減らしました」。着任3年目となる校長は静かに語る。現在の時間割には、従来のような45分一コマの厳密な区切りが存在しない。午前中の2時間は「探究・基礎セッション」と位置づけられ、児童は各自の目標シートに基づいて算数のドリルを解いたり、社会科の課題について調べものをしたりする。
教室を見渡すと、黙々と画面に向かう児童の横で、教員が車椅子に座る児童と膝をつき合わせて対話している。一見するとバラバラに見える空間だが、そこには明確な意図がある。得意な分野は学年を超えて先取りし、つまずきがある箇所は前学年の単元まで戻ってじっくり学び直す。周囲のペースに合わせるストレスから解放された子どもたちの表情は驚くほど穏やかだ。
もちろん、最初からすべてがスムーズに運んだわけではない。導入当初は「遊んでしまう子が出るのではないか」「学力が低下するのでは」という保護者からの懸念の声も相次いだ。しかし、定期的な学習ログの共有と小テストによる丁寧な定着度確認を繰り返すことで、徐々に地域の信頼を勝ち取ってきた。