インターネット上や一部の都市伝説で囁かれる「あの腕は最初から作られていなかったのではないか」という極端な言説。この噂の真相を探るべく、専門家の知見と過去の記録を照らし合わせる必要がある。結論から言えば、彫刻が発掘された1820年時点では、不完全ながら腕の断片が近隣で発見されていたというのが史実だ。
ではなぜ、現在の姿のように腕が完全に失われてしまったのか。発掘直後、オスマン帝国支配下の現地当局と、像を買い取ろうとしたフランス海軍将校との間で激しい争奪戦が勃発した。その輸送過程の混乱によって腕の破片が紛失したという説や、後の修復作業で「整合性の取れない腕を無理に接着するより、あえて切り落とした美しいシルエットを保つべきだ」という美学的判断が下されたという説が存在する。歴史の闇に消えた「腕の消失」の経緯解説は、今なお美術史家たちの探究心を刺激してやまない。