ムーブメントの牽引役となったのは、ジャンルの境界線を軽々と飛び越える新世代の料理人たちだ。都内や京都を中心に増殖したネオ割烹では、ぬたがコース料理の主役級の前菜として再定義されている。
火入れの技術がそれを支える。わけぎを湯にくぐらせるのはほんの数秒。氷水に落として色止めをした後、布巾で水分を徹底的に絞る。この古典的な手仕事を極限まで突き詰めつつ、合わせる素材には生食用の本ミル貝やキャビア、あるいはハーブオイルを数滴垂らす。伝統的な「ぬた=沼(ぬかるみ)」という語源が想起させる野暮ったさはそこにはない。歯が繊維を断ち切る心地よい衝撃音と、立ち上る清涼な香気。酒を呼ぶ力は、かつての居酒屋メニューの域をはるかに凌駕している。