「茨城は太平洋の外洋に面しているから、いつ行っても波がある」「湘南がフラットならとりあえず茨城に行けば遊べる」――インターネット上のサーフィンまとめサイトで頻繁に見かけるこの言説には、危険な落とし穴が潜んでいます。
第1の盲点は、夏場に突如として発生する水温の急降下現象です。茨城県海水温リアルタイムの数値をモニタリングしていると、7月や8月の猛暑日であるにもかかわらず、水温が24℃前後からわずか一晩で15℃〜17℃台まで急落する事態に直面します。これは南西の強風が沿岸表層の温かい海水を沖へ押し流し、深海から冷たい海水が湧き上がる「沿岸湧昇(アップウェリング)」と呼ばれる海洋現象によるものです。湘南や千葉南部の感覚で「真夏だからタッパーやスプリング(半袖短パン)で十分」と高を括って海に入ると、10分で手足が痺れ、低体温症に陥る危険すらあります。茨城の夏を攻める際は、真夏であってもロンスプ(長袖半ズボン)や3mmフルスーツを車内に積んでおくのが常識です。
第2の誤解は、波のサイズ表記と危険度の乖離です。茨城サーフィン波情報を提供するアプリやサイトで「波の高さ:腰〜腹」と表示されていても、茨城の波は千葉や湘南のそれと比べて水量が圧倒的です。遠浅に見えるサンドバーでも、外洋のパワーをダイレクトに受けるため、同じ「腰サイズ」でもテイクオフ時の推進力や巻き上げるパワーは段違いです。
さらに見落とされがちなのが、茨城沿岸タイドグラフ潮見表を考慮しない時間設定です。茨城の多くのポイントは、大潮の干潮時に波が急激にホレ上がってダンパー(波全体が一気に崩れる状態)化し、逆に満潮時には潮が多すぎてブレイクしなくなります。「大潮の上げ3分から7分」など、潮が動いているミドルタイドのタイミングをピンポイントで狙わなければ、移動時間と高速代を無駄にすることになります。