「レシピ通りに作ったのに、塩分が強すぎて食べきれなかった」という失敗談がネット上で頻発する最大の原因は、日本で一般的に流通している「アンチョビ」と、スウェーデン現地で使われる「Ansjovis」の原材料が全く異なる点にあります。
イタリアやスペインの一般的なアンチョビは、カタクチイワシを長期塩蔵発酵させて油漬けにしたもので、鋭い塩味と魚の熟成香が特徴です。対して、本場スウェーデン伝統料理で使われる「アンショビス」は、バルト海で獲れるニシン科の小魚スプラットフィレ(Sprattus sprattus)を、シナモン、クローブ、オールスパイス、生姜、砂糖、酢を調合した特製スパイス液で甘塩っぱく漬け込んだ保存食です。
つまり、本場の味は単なる塩味ではなく、「甘美なスパイス香と穏やかな酸味、そして小魚の旨味」が複雑に絡み合う奥深い味わいなのです。地中海産の油漬けアンチョビをそのまま規定量投入してしまうと、スパイスの芳香が欠落するだけでなく、塩分過多の平坦な味になってしまいます。日本の市販アンチョビで本場スウェーデンの味再現を狙う場合は、アンチョビの量をやや控えめにし、オールスパイスをほんのひと振り加え、砂糖小さじ半分を乳液に溶かすことがプロ推奨の補正テクニックです。