太田裕美が歌った『木綿のハンカチーフ』は、作詞家・松本隆との黄金コンビによる最高傑作の一つだ。都会へ旅立った男と、故郷に残された女の対話形式で進むこの曲は、歌詞のドラマ性もさることながら、メロディの構造が極めて緻密である。
前半ののどかな田舎の情景を思わせるメロディから、サビに向けて一気に感情が高まる展開。切ない歌詞とは裏腹に、テンポは軽快でポップだ。この「悲しい歌詞を明るいメロディに乗せる」という手法こそ、彼が好んだコントラストであり、聴き手の感情を何度も揺さぶる仕掛けなのだ。一度聴いたら忘れられない、口ずさみたくなる魔法がここにある。