『キテレツ大百科』が当時の子どもたちにこれほど強い郷愁を残している最大の理由は、その放送枠にありました。毎週日曜19時00分〜19時30分という時間帯は、日本のアニメ史における最高峰のゴールデンタイムでした。
18時30分からの『サザエさん』で日曜の夕暮れを感じ、続く19時00分からの『キテレツ大百科』で笑い、19時30分からの『世界名作劇場』へと続くフジテレビの日曜夜のタイムテーブルは、当時のファミリー層にとって鉄板のルーティンでした。翌日の登校や登園を控えた憂鬱感、いわゆる「サザエさん症候群」を忘れさせてくれる温かいホームコメディとして、作品は日本中の家庭に寄り添っていたのです。
音楽史に残る主題歌の魔力とコロ助の声優交代
本作を語る上で欠かせないのが、数々の名曲主題歌です。特に『はじめてのチュウ』(歌:あんしんパパ)は、オープニングとエンディングの両方で何度も起用され、作品の代名詞となりました。ミュージシャンの実川俊晴氏がテープの回転速度を変えて自身の歌声を加工した独特のボーカルスタイルは、一度聴いたら耳から離れない強烈なインパクトを残しました。ほかにも、コロッケの作り方をそのまま歌詞にした『お料理行進曲』や、当時の受験生・子どもの心情をリアルに歌った『すいみん不足』など、日常に根ざした楽曲が世代の記憶に刻まれています。
また、主人公キテレツの発明品でありマスコット的存在の「コロ助」の声優は、途中で交代劇がありました。初代は『Dr.スランプ アラレちゃん』のアラレちゃん役などで知られる小山茉美氏が担当(第1回〜第86回)。小山氏の産休・海外留学に伴い、第87回からは『アルプスの少女ハイジ』のハイジ役で知られる杉山佳寿子氏へと引き継がれました。どちらの声優も天真爛漫で少し生意気、それでいて健気なコロ助の魅力を完璧に表現し、国民的人気キャラクターへと押し上げました。